BSA(一般社団法人日本聖徒アンデレ同胞会)から「信徒叢書23」として、拙書『キリスト教と科学』が発刊されました。本書で書き記したかったことは、キリスト教と科学の本来的な近接性です。
西欧においては「科学」と「技術」の間に明確な分岐があり、住み分けがなされていました。「科学」(自然哲学)は「知」の領域として「大学」において担われ、工学で扱うような「技術」はむしろギルドなどの職人の人々によって、しっかりと為されていました。日本には、最初から「科学」と「技術」の峻別は存在しませんでした。私たちも「科学技術」とひとかたまりで呼称し、理解することの方が多いのではないでしょうか。それは、まさに日本が、「知」とは何かという問いや、「神学」と「科学」の歴史的な親密性という文脈を抜きに近代化に踏み出したからにほかなりません。なぜ「神学」ぬき、「工学」ありの学校を西欧では「大学」と呼ばないのかを理解できなかったのです。
ニュートンまでの自然科学者たちが目指していたのは、実は神の存在証明でした。それ以降は、「神」を一切介在させずに、自然や宇宙の成立やシステムを合理的に完璧に説明できる、神学から完全に独立した科学の確立という方向性に向かったことは間違いありません。いわゆる「科学万能」の世界です。しかし、ビッグバン理論など、現代科学の一つの結論は、宇宙発生以降、生命発生以降のプロセスについては科学によって説明可能であるけれども、では、そもそもビッグバンがなぜ起こったのか、原初の生命がなぜ発生したのかについては「分からない」と言わざるを得ない、ということです。
現代科学によって、すべてを説明することはできません。そして、そこにおいて、神学が貢献すべき領域と責任は限りなく大きく、深いのです。
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礼拝カレンダー2023年9月号
礼拝カレンダー9月号が完成しましたのでお知らせいたします。
8月は大型の台風の上陸や猛暑が重なりましたが9月は過ごしやすい気候になることを切に願っています。また、9月17日・18日は教区研修会(於:上田聖ミカエル及諸天使教会)が予定されています。
※9/12修正…9/17長野聖救主教会の8:00の聖餐式はありません。

93年前のある女性の伝道師を覚えて
6月の教区教役者レクイエムで覚える逝去教役者の中に、広瀬鋹子伝道師のお名前を見つけました。教区の資料では、1875年生まれ、1955年6月8日に、79歳で主のもとに召されたとあります。その他、「1902年に伝道師に認可、名古屋聖ヤコブ教会等でミス・トレントと共に働く」という記述がありますが、それ以上の情報はありませんでした。
ただ、ふと以前、カナダ、トロントにあるカナダ聖公会の資料室を調査した際に、カナダ聖公会の機関誌である『リヴィング・メッセージ』の中に、「Miss Trent and Mrs. Hirose」というタイトルがつけられた一枚の写真があったことを思い出しました。それは、1929年にカナダ、ヴァンクーバーで撮影されたもので、花束を持った広瀬伝道師の満面の笑みが輝く、忘れ難い一枚でした。さらに調べると、広瀬伝道師はトレント先生と共に、1929年6月から10月にかけてカナダへの修養の旅に出られていたこと、また帰国後に教区の各教会を訪問し、カナダでの経験を報告されていたことを伝えるトレント先生の手記を発見したのです。松本、新潟、長岡、稲荷山、長野の各地で熱情をもって、貴重な経験を語られる広瀬先生の姿が生き生きと描かれています。中でも、岡谷での報告会の記事には胸を揺さぶられました。
「岡谷には世界最大級のシルク工場があり、3、4万人の若い女性たちが働いています。H.H.コーリー司祭と夫人がこの地を宣教の拠点とし、彼女らのために教会(セント・バルナバス)を建てたのは、この地が必要とすることに応えたからです。夕方の集まりには約40人の工女たちが集まってきました。晩祷の後、広瀬さんは彼女たちに、彼女の幼い頃に経験した困難と、その後いかにしてキリストに召されたか、そして、『救い主のもとに来なさい』と愛情深く訴えたのでした。彼女たちはどれほど心を動かされたことでしょう!」
93年も前の中部教区には、船で海を渡って海外の地で豊かな経験をし、その後、中部教区のそれぞれの地にある者たちに熱い思いで証をし、主の救いを宣べ伝えていた女性の宣教者が確かにいたことを、私たちも覚え、そして倣いたいのです。
礼拝カレンダー2023年8月
暑い暑い夏が来ました!皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
礼拝カレンダー8月号も完成しましたのでお知らせいたします。
教区報「ともしび」の発送に合わせて少し早めの発行に変更いたしましたので、ともしびと一緒に各教会へも到着する予定です。
※7/27修正・・・8/6の松本聖十字

京都教区・小学生キャンプのお知らせ
京都教区さんより、「小学生キャンプ」のお知らせをいただきました。
〇 対象が小学4~6年生となっておりますので、基本的には、保護者の責任において京都教区センターまたは北小松研修所まで送り迎えをしていただきますよう、お願いします。
〇 チラシに「遠方より参加される方には交通費の補助を考えています」とあります。中部教区からの参加者に対しても、同様の対応を検討しています。
キャンプのスタッフも募集しているということですので、関心のある信徒さんがいらっしゃいましたらどうぞお知らせください。
※申し込み用紙が必要な方は、中部教区センターまでお問い合わせください。


中部教区発行書籍のご案内
AIには回答できない奇跡の物語
今、世間ではChatGPTが話題になっています。ちなみに、
「日本聖公会の宣教を強めるためにはどうすれば良いですか?」とChatGPTに尋ねてみたところ、2秒ほどで以下の回答が返ってきました。
「いくつかの方法が考えられます。例えば、①教会内外の人々とのコミュニケーションを深め、信仰や教会の活動について誠実に伝えること。②教会のある地域や社会に対する牧会的働きをていねいに実践し、地域の課題や世界の課題に関心を持ち、協力して取り組むこと。③SNSなどを活用し、日本聖公会の歴史や教理、礼拝や祈りなどについて分かりやすく紹介すること。④他のキリスト教団体や宗教団体との対話や協働を進め、エキュメニズム(教会一致)や宗教間平和への貢献を目指すこと。これからも神さまの導きと愛に従って、日本社会に福音を伝える使命を果たしていくことができるように祈っています」
いかがでしょうか。実にまっとうな助言です。この通り、しっかりできれば、日本聖公会の宣教は間違いなく発展することでしょう。ではAIで得られないものとは何なのでしょうか。私は、それは、個々、具体的な教会や社会という現場での、言葉にもならないような一つひとつの出会いであり、沈黙であり、祈りなのだろうと確信しています。
先日、ある教会での聖餐式。Kさんというご高齢の信徒さんが、車椅子に乗って久しぶりにご出席くださいました。娘さんのお話では、教会に来ていることもあまりはっきり認知できていないということでした。しかしながら、私がKさんにパンを陪餐した時です。「アーメン」という口の動きと共に、Kさんの顔がくしゃくしゃになり、いっぱいの涙を流されたのです。
こんな「奇跡」の物語について、AIは決して語ることはありません。今秋の日本聖公会の宣教協議会では、こうした物語をたくさん分かち合うことができればと願っています。