『神様のシナリオ』 

この冬は異常気象と言われるほど、雪の積もらない地域に積もったり、思ってもいなかった対応に迫られ、思いどおりに進まない復旧に、私たちの思いを超えた気象の変化の厳しさを感じ取ったことでしょう。
今年は3月5日の大斎始日(灰の水曜日)から日曜日を除く四十日間の大斎節を迎えています。古くは復活日に洗礼を受ける準備の期間として守られていましたが、今では主イエス様が荒野で四十日間祈りと断食の後、悪魔の誘惑にあわれ、神様のみ言葉でこの誘惑に打ち勝たれたことを覚え四十日間の大斎節が守られます。この荒野に登場する悪魔は何のために登場したのでしょう。聖書にはイエス様の「あなたの主を試してはならない、また主を拝み、ただ主に仕えよ」との言葉の中にその答えがあるように思います。悪魔のシナリオはイエス様を、神様が本物かどうか試し、神様を神様として礼拝し、神様の愛に応えて歩むことから背かせようとのシナリオを持って立ち向かいましたが、イエス様はそのような誘惑を退けられました。12弟子と呼ばれた最初の使徒たちも自分のシナリオを持ってイエス様とともに歩んだことでしょう。イスカリオテのシモンの子ユダは、イエス様こそ真のメシア、ローマに立ち向かいユダヤを救う救世主として持っていたシナリオが狂い、イエス様を裏切る道に踏み出してしまいます。12弟子を代表するペトロも、十字架にかけられようとするイエス様を「そんな人は知らない」と、自分のシナリオとは違う道を歩み出そうとされるイエス様を受け入れることができませんでした。けれどペトロをはじめ、お弟子さんたちはご復活の主イエス様に出会うことにより、はじめてイエス様が与えてくださる神様のシナリオである愛の道を歩み始めることができました。そしてその後の生涯は弱さや挫折や困難に遭いながら、神様の恵みに包まれ、自分のすべてをささげ、仕え、イエス様を証しする道を歩んでいます。
よくマラソンはシナリオのないドラマだといわれます。昨年の豊橋ハーフマラソンは、ちょうどご復活日と重なり、近所の駐車場がいっぱいで、聖餐式においでになれない信徒の方が何組もいましたが、今年は大丈夫なようです。マラソンに限らず、私たちの人生も自分のシナリオのないドラマです。またそれが人生でしょう。けれど、そこに自分のシナリオを持ち込んだ時、私たちは自分の思いのままに、自分に頼る道を歩み始めてしまい、私たちに命を与えてくださった神様のシナリオから外れた道を歩み始め、サタンのシナリオの道に行くことになるのでしょう。私たちの人生も様々な誘惑に出合い、主イエス様とともに歩む信仰の道から外れてしまいそうです。けれどご復活の主イエス様と出会うことにより、神様のもとに立ち返ることができます。日曜日は、主イエス様のご復活を記念する日で主日です。主日に行われる聖餐式において、聖餐に与かることにより神様の恵みと力をいただいて、すべての人の救いという神様のシナリオに歩み出しましょう。

司祭 マルコ 箭野眞理
(豊橋昇天教会牧師)