『可児伝道所から』

可児伝道所は、日本聖公会の中でも、フィリピンから働きに来ている信徒を主な対象に開かれた唯一の教会です。フィリピン人会衆は皆、このような教会が自分たちの住む地域にできたことに心から感謝をしています。人口の85%以上がクリスチャンという国柄、フィリピン人にとっては、主日の礼拝を中心においた生活がごく当たり前だからです。コリントの信徒への手紙2の9章11節~12節にはこのように書かれています。「あなたがたはすべてのことに富む者とされて惜しまず施すようになり、その施しは、わたしたちを通じて神に対する感謝の念を引き出します。なぜなら、この奉仕の働きは、聖なる者たちの不足しているものを補うばかりでなく、神に対する多くの感謝を通してますます盛んになるからです」。

昨年の毎主日の礼拝参加者はおおよそ20人~30人でしたが、最近は、15人~25人に減少しています。世界的な経済不況によって多くの人が解雇され、幸い転職できた人がいる一方で、職が見つからず帰国を余儀なくされた人が大勢いるからです。それぞれの生活はとても不安定で大変ですが、私たちは信仰のゆえにこのような状況に堪え、希望を持つことができています。

可児伝道所は、この地域の中でとても大切な存在になっています。フィリピンから働きに来ている信徒たちのための、仕事や生活に関する相談窓口としての役割を担っているばかりでなく、学習会や集会、会議など、いろいろな活動の場としても用いられているからです。マタイによる福音書25章35節~36節に「お前たちはわたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ」とあります。

この地に居住しているとはいえ、可児伝道所に集うフィリピン人はまだまだ訪問者に近い存在です。しかし、このような者に対して、国籍を超えて心を寄せ、共に生きようとして下さる信仰の友が大勢いることは、私たちの心を本当に温かく、豊かにしてくれます。教会は、礼拝に出席するだけでなく、互いに助け合い、喜びを分かち合うコミュニティーそのものだと実感しています。

嬉しいことに、5月30日には一宮聖光教会の伊藤司祭と信徒の方々、8月22日には愛知聖ルカ教会の信徒の方々がそれぞれ可児伝道所に来て下さり、共に聖餐に与り、聖餐式後には暖かい交わりのときが与えられました。また、8月29日には、可児伝道所の信徒と共に一宮聖光教会に行き、新たな交わりのときを持つことができました。このような輪がますます広がり、神の国を作り出す器として、共に歩んで行けたらと願っております。

執事 山下 グレン
(可児伝道所勤務)