『「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。」(ヨハネによる福音書1章14節)』

 今年もクリスマスがやって来ます。私たちの置かれた現実のただ中にみどりごイエス様がお生まれになります。お迎えするにふさわしい備えができるでしょうか。心からお祝いができるでしょうか。この原稿を書いている今はまだ11月中旬、日々の事柄で、てんてこ舞いしています。健康が与えられて働けるというのは大きなお恵みですが、ときにしんどくなることもあります。

 今、日本全国の私立幼稚園は岐路に立たされています。「子ども・子育て支援新制度」が今年の4月から施行され、地域差はありますが遅かれ早かれ各幼稚園は決断し変わっていかなければなりません。園としてこの新制度に乗るのか乗らないのか、認定こども園(「教育」と「保育」を一体的に行う施設)へと移行するのかしないのか、さらには認定こども園の中でも幼保連携型をめざすのか幼稚園型をめざすのか。選択は自由だと国は言っていますので、ますます困惑します。私が園長を務めている幼稚園は園舎が1974年に建てられたものであり、築41年、老朽化は否めません。建て替えたいのですが問題は資金で、公的な補助金が戴けるとしても園負担が必要となってきます。幼保連携型認定こども園へ移行するに伴う園舎改築だったら補助金が4分の3戴けるので園負担は4分の1で済みます。仮に総事業費3億円としても園負担は7千5百万円なので、なんとか手が届きそうと希望の火を燃やし、この3年間上越市にアタックし続けてきましたが、このたび結論を言い渡されました。少子化の中、この地区にはすでに保育園が多数あり供給は充分足りているので、これ以上保育園ないし保育機能を持つ施設を増やす必要はないと市は認識している。必要がないところに市が多額の投資をする理由がない、とのことでした。うちの園がある地区が子どもの数に対して保育園の収容人数が上回っているというのは重々承知で、しかし近年1歳2歳の子どもの入園問い合わせが多く来ているのも現実です。このことや当園の内情を赤裸々に話してなんとか助けてもらえないかとお話してきたのに、切羽詰まってからの回答でした。

 文字通り寝ても覚めてもこのことで頭はいっぱいです。私の判断、私の行動が及ぼす影響の大きさ、責任の重さを痛感しています。90年前にカナダから派遣されたパウルス主教(当時、司祭)がここ高田の地にかかげた幼児教育の灯を、消してはならないと思っています。

建園の精神
 「幼児の生命と人格を尊重し、個々の内に与えられている能力を充分に伸ばさせる。」
 聖公会紅葉幼稚園は1925(大正14)年、日本社会の健全な発達のためには真の民主主義教育が、幼児の内から行わなければならないことを痛感したカナダ聖公会派遣宣教師P・S・C・パウルス司祭によって開設されました。

 来週、上越市の担当課と面談予定です。どう話が進んでいくのか不安です。この文章が皆さまのお目に触れる頃はすでに結論が出ているかもしれません。でもどんな結果になろうとも、生きておられる神様の導きを信じ「イエス様、一緒にくびきを負ってください」と祈るものであります。

司祭 イサク 伊藤幸雄
(高田降臨教会、直江津聖上智教会牧師)