「佐々木鎮次主教とカナダ聖公会祈祷書」

8月にセロ・パウルス司祭の葬儀のためバンクーバーに行きましたが、その折、日系聖十字教会で説教する機会が与えられました。カナダの日系教会については何も知りませんでしたので、牧師のイム・テビン司祭とやり取りをしましたが、その中で教区2代目の主教であった佐々木鎮次主教が1937年(昭和12)、当時の日系教会(昇天教会と聖十字教会)を訪問していることを知りました。その年にカナダのバンフで開かれたカナダ聖公会総会に出席された帰途に立ち寄られたのでした。

パウルス司祭の葬儀から帰国しましたら、ある方から佐々木主教がカナダ聖公会祈祷書教会暦の小祝日に名前が掲載され、記念されていることを知らされました。2月24日が記念日になっています。なぜその日なのかは不明です。佐々木主教の逝去は12月ですので逝去記念日でもないようです。特祷、奉献の祈り、晩餐後の祈りは佐々木主教の名前が入った祈りになっています。ちなみに特祷は、「わたしたちの羊飼いである神よ、あなたはあなたの僕・パウロ佐々木(主教)に、試練の時、教会の自由と全き証しを守るために不動の精神を与えられました。…」となっています。

佐々木主教は戦時中、教会合同問題で揺れる日本聖公会の一致のため東京教区主教に転出されました。その後スパイ容疑で憲兵隊司令部に留置され、厳しい尋問を何ヶ月かに渡り受けましたが、聖公会の信仰を守り通されました。心臓が悪かった主教は留置の結果、健康が著しく損なわれ、戦後、日本聖公会再建の総会議長を務め終えた後、1946年12月21日、61歳で逝去されました。カナダ聖公会はそのような佐々木主教の信仰の戦いを覚え記念しているのです。