私は今年の4月から、名古屋聖マルコ教会の牧師館に移り住んでいます。聖マルコ教会は現在、聖堂の耐震工事が行われていて、毎日のように建設会社のトラックが駐車場に停まって木材などの建築材料が搬入されたりしています。工事現場である聖堂内には埃をかぶったブルーシートがオルガンや長椅子などを覆っています。入口の鉄門には、「工事関連で危ないため通行の際に注意して欲しい」というようなメッセージの紙が貼られています。確かに落ち着いてない環境です。
そのような状況ではありますが、初日から私の目に入ったことがありました。それは、教会に入るためには駐車場に面している鉄門を通らなければならないですが、その門は多くの部分で塗料がはがれて、真っ赤にさび付いていたことでした。さらにそこから教会の方をみると牧師館に上がる外付け階段も真っ赤になっていることがまる見えです。
「先ずあれを綺麗にしなきゃ」と思いましたが私も実施できず5か月が経ってしまいました。その5か月間、毎日階段を昇ったり降りたり、鉄門を開けたり閉めたりしながら言葉と思いにだけとどまっている自分の情けなさが鏡のようにさび付いた鉄門にうつっていたことを感じました。
耐震工事が終われば今よりはきっと多くの方々が出入りするようになるでしょうし、それを期待して塗料を塗って綺麗にすれば、誰かがきても入口のほうから歓迎される感じを受けることが出来るのではないかと思いました。
この度、川島創士聖職候補生の教区実習を私が指導することになりました。初日の主日は後藤香織司祭のもとで名古屋聖マタイ教会での実習、そしてその翌日からは、NPO法人ルカ子ども発達支援ルーム「そらのとり」と柳城幼稚園、名古屋学生青年センター、最後の日は愛知聖ルカ教会での奨励実習という計画で日程を組みました。その間に、名古屋聖マルコ教会での勤務を2日間入れました。1日目は「草むしり」、2日目はこの機会にということで「塗装作業」を入れました。単純に労働だけで終わることではなく、信徒さんに声を掛けて一緒に草取りをしてから彼を囲んで昼食の交流会を持ちました。お弁当を買ってきて、簡単なことではあるけれど皆で一緒に野菜を洗ってサラダを作ったり、お湯を沸かしてスープを作ったりデザートを作ってはわいわい楽しい時間を過ごしました。
「塗装」予定の日は雨が降ったため残念ながら実施は休止としました。個人的には5か月前から思っていたことで、川島さんがいる今がチャンスだと意味づけて鉄門と階段の塗装作業をしようと塗料や道具まで買っておいたけれども、5か月前からの思いは叶いませんでした。その代わりに、川島さんと一緒に信徒さんを訪ねて食事とお茶をしながらリアルな教会の話を聞く時間も持ちました。
私個人としても、聖職候補生の実習指導をしたことは初めての経験で非常に意味ある時間でした。川島さんとも今回初めてお会いしたので、新しい人に出会って色々なことを一緒にしましたし、彼を囲んで信徒さんとも様々な話し合い・交流会が出来たことなどを通して、交わることの大事さを改めて感じることが出来ました。そして新しい色々なことが見え始めて、新しい動機付けとともに名古屋でのこの5か月間を振り返るきっかけにもなりました。
司祭 イグナシオ 丁 胤植
(名古屋聖マルコ教会牧師)