ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻と、いのちの蹂躙に心を痛めます。世界のキリスト者たちと共に、一日も早く平和が回復されることを祈り求めます。
今回の事態の背景には、14世紀以来のロシアとウクライナにおける正教会間の歴史的緊張関係があります。1991年にウクライナは国家として独立しましたが、従来の「ウクライナ正教会|モスクワ総主教庁」はロシア正教会の枝教会であり、モスクワ総主教の精神的な権威の下にあり続けていました。それは、多くのウクライナ人にとっては受け入れがたいものでした。そうした中、モスクワから独立したウクライナの真の国民教会の創立が試みられ、2019年1月、全世界の東方正教会の精神的首位者であるコンスタンティノープル総主教バルトロマイ1世は、ついに新しい教会である「ウクライナ正教会」を正式に承認しました。
この2つの正教会をめぐる対立は、ロシア人とウクライナ人の関係についての2つの異なる歴史的視点を反映しています。ロシア正教会にとって、ロシア人とウクライナ人はあくまでも1つの民族であり、単一の教会が彼らを統合しなければなりませんでした。プーチン大統領は、最近の論考の中でまさにこの主張を展開し、「ウクライナ正教会」をロシア人とウクライナ人の「精神的統一に対する攻撃」と激しく批判しました。
一方で、「ウクライナ正教会」の初代首座主教であるメトロポリタン・エピファニーは、「ロシア帝国の伝統」を断固として拒絶し、独自の文化を持つ独立した民として、ウクライナ人は独立した教会を必要としていると明言します。
同じイエス・キリストを主と告白する者たちの対立が、国家の軍事的暴力の一つの根拠とされることは大変悲しいことです。であるからこそ、この地上における〈正義・平和・いのち〉の実現を願い求める「エキュメニカル運動」は、きわめて重要な私たちのミッションなのです。